A.重度の歯周病の場合や歯に破折が見られる場合、または歯の大部分が欠けている場合には、被せ物を装着することができません。根管治療を行うこと自体は可能ですが、「機能する歯」としての回復は難しく、最終的には歯を抜かなければならなくなることがあります。
精密根管治療
抜かずに守る、
その1本に全力を。
「精密根管治療」
根管治療とは

歯の内部に存在する歯髄(神経)や血管が通る部分は「根管」と呼ばれています。根管治療とは、歯髄を除去した後に、歯の根管内の清掃・洗浄・消毒を行い、痛みや炎症を抑える治療法です。
この治療は、歯を抜かずに保存するための重要な治療法です。
根管治療が必要なケース
根管治療は、おもに次のような状態で選択される治療です。ほとんどの場合、むし歯による細菌感染が原因ですが、重度の歯周病や外傷、歯ぎしり・食いしばりも要因となることがあります。
歯髄炎
(しずいえん)歯髄炎は、歯の神経(歯髄)が炎症を起こした状態で、熱い・冷たいものを口にするとしみたり痛みを感じたりします。また、症状が進むと常に鈍痛を感じることもあります。
歯髄は炎症により膨張しますが、根管の内部にあるためその膨張が制限され、最終的には歯髄壊死(しずいえし)を引き起こします。
歯髄壊死
(しずいえし)歯髄壊死は歯髄(神経)が死んでしまった状態です。初期には歯の痛みが感じられることがありますが、歯髄が死んでしまっているため、冷たいものや熱いものに対する感覚は失われます。また、歯の色も黒っぽく変化します。
痛みがなくなったからといって放置すると、壊死した歯髄が体内で異物となり、炎症を引き起こします。
根尖性歯周炎
(こんせんせいししゅうえん)根尖性歯周炎は、歯根の先端に炎症が生じ、膿がたまる状態です。おもに進行したむし歯から発生しますが、一度根管治療を行った歯が、根尖性歯周炎となってしまうケースも多く見られます。
症状としては、噛む際の激しい痛みや歯ぐきからの膿漏れが挙げられ、急性の場合は頬や顎の腫れが生じることもあります。
根管治療は「やり直し」が多い

『保険診療請求回数の全国集計』(2010年・政府統計)によると、2009年度の永久歯の根管治療の全国保険診療請求件数は約1,350万件。そのうち、歯の神経を取る「抜髄」(初めての根管治療)は約600万件、再根管治療(根管治療のやり直し)は約750万件でした。
つまり、初回の根管治療が成功した場合でも、その後の経過が悪くなる症例が多く存在するということです。
再治療が必要になる理由の一つに、日本の多くの歯科医院で、根管治療が保険診療で提供されていることがあります。保険治療であっても、その範囲内で全力を尽くしますが、使用できる材料やさまざまな制約があるため、再発を防ぐことが難しくなります。
「保険適用の根管治療」と
「自費の根管治療」の違い
自費の根管治療では、熟練した医師がマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や高性能な器具を駆使して、根管内を的確かつ丁寧に処置します。
その結果、これまで治りにくいとされていた症例でも、高い成果を上げることが可能となりました。これを、従来の治療法と区別するため「精密根管治療」と呼んでいます。
| 通常の根管治療 (保険) |
精密根管治療 (自費) |
|
|---|---|---|
| 目的 | 症状を緩和することが主目的 | 再発を防ぎ、歯の寿命を最大限伸ばす |
| 再発率 | 比較的高い | 低い |
| 通院回数 | 2〜8回 | 1〜3回 |
| 治療時間 | 30分 | 60〜90分 |
| 視野 | 肉眼(完全に汚染がなくなったかを目視で確認することは困難) | マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用し、目視で汚染物質やひび割れ、穴などを発見することが可能 |
| 使用器具・ 薬剤 |
制限あり | ニッケルチタンファイル、ラバーダム、MTAセメントなど、よりよい薬品や器材を使用してアプローチできる |
| 費用 | 保険適用 | 保険適用外のため費用がかかる |
マイクロスコープ

根管の形態は個人によって異なり、非常に細いため肉眼での観察は困難です。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を利用することで、肉眼では見えない部分まで確認でき、より精密な根管治療が実現します。しかし、単にマイクロスコープを使うだけでは不十分で、歯科医師の専門的な訓練と経験が必要となります。
ラバーダム

ラバーダムは、治療箇所への唾液の混入を防ぐためのゴム製のシートです。ラバーダムを使用することで感染を防ぎ、無菌状態を保ったままの処置が可能になります。根管治療においてラバーダムの有無は非常に重要です。
ニッケルチタンファイル

根管治療では、「ファイル」と呼ばれる器具を使って根管を清掃します。ファイルには「ステンレスファイル」と「ニッケルチタンファイル」があり、ニッケルチタンファイルは柔軟性が高く破折リスクが低いため、複雑な根管に適しています。これにより、安全性が高く精密な治療が可能になります。
MTAセメント

MTAセメントは、根管治療で使用される充填材料のひとつです。歯の神経を取った後の空洞を封鎖する際に用いられ、複雑な根管にも適した性質を持っています。生体親和性が高いとされており、歯科治療の現場で幅広く活用されています。
治療の流れ

- 診査・診断
(1回30分程度)
・レントゲン、CT、口腔内検査など
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- 精密根管治療
(症例に応じて1〜3回・各60分程度)
・治療概要の説明
・被せ物や土台の除去(必要に応じて)
・むし歯や感染した部分の除去
・以前の治療で入れた根管内の詰め物の除去(必要に応じて)
・根管内の形成・洗浄・消毒(症例により必要な治療回数は異なります)
・根管に充填剤を入れて密封
・レントゲンで充填材が適切に入っているかを確認
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- 歯の土台と被せ物を入れる治療
(2〜3回・各30〜60分程度)
根管治療で削った部分の歯質を修復するために、被せ物を製作して装着します。
その後、定期検診(治療後の経過観察)へと移行します。
精密根管治療についての注意点
- 無菌化を徹底する
- 治療中は唾液などが入らないよう、頻繁にうがいをすることはできるだけ避けてください。また、治療中は口を開けたままで行いますので、顎が疲れた際には遠慮なくお知らせください。
- 1回の治療時間が長い
- 根管内の状況によって異なりますが、一般的に、保険診療の根管治療より、1回の治療時間が長くなります。
- 治療中に歯が押される不快感がある
- 細い根管を治療する際、特に根管が硬く曲がっている場合には、治療中に歯が押されて不快感が生じることがあるかもしれません。
- 治療により痛みや腫れが出る場合がある
- 治療前に痛みがない場合でも、治療によって一時的に痛みや腫れが生じることがあります。
- 症例によっては適応できない場合がある
- 治療の途中に歯根が割れていることが判明した場合、歯を保存できない可能性があります。
- 保険適用外のため費用がかかる
- 保険診療の根管治療では、利用できる器具や薬剤に制限があります。生涯にわたって口腔の健康を保ちたい方には、自費診療による精密根管治療をおすすめします。
- 完全予約制
- ご予約の時間に余裕をもってご来院いただけますようお願いいたします。
費用について
■初回根管治療
(初めて神経を取り除く処置)
| 歯の種類 | 料金(税込) |
|---|---|
| 前歯・小臼歯 | ¥80,000/1歯 |
| 大臼歯 | ¥80,000/1歯 |
■再根管治療
(過去に行った根管治療の再処置)
| 歯の種類 | 料金(税込) |
|---|---|
| 前歯・小臼歯 | ¥90,000/1歯 |
| 大臼歯 | ¥99,000/1歯 |
■再診料
¥3,300/1回(税込)
■ 必要に応じてかかる費用
(オプション)
| 内容 | 金額(税込) |
|---|---|
| CT撮影 | ¥5,500 |
| 隔壁 | ¥8,800 |
| MTA(薬剤) | ¥8,800 |
✔根管治療後には、歯の土台(コア)や被せ物(クラウンなど)の処置が別途必要です。
✔お支払いにはクレジットカードもご利用可能です。
✔精密根管治療は1年間の治療費総額が10万円以上となった場合、医療費控除の対象となります。

「できるだけ歯を残したい」
その思いに応えるのが、
精密根管治療です。
根管治療は、一度で終わればそれが理想です。
しかし現実には、再治療を必要とするケースが多く、当院でもそのご相談が年々増えています。再治療には限界があり、2回目、3回目と治療の回数が増えるほど、歯の寿命が短くなる可能性が高くなります。
だからこそ、初回の治療から最大限の精度と丁寧さをもって処置することが、歯を残すために最もよい策になると考えています。
当院は、歯科医療の中でも難しいとされる精密根管治療に特化した医師が在籍する歯科医院です。お悩みのある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
A.症例や歯の位置によって異なりますが、治療は通常1〜3回必要です。もし週に1回通院できるのであれば、約3週間で治療が完了します。その後、歯の土台と被せ物を入れる治療を行います。
A.治療中の痛みは、麻酔によってほとんど感じることはありません。ただし、麻酔が効きにくい体質の方もいらっしゃいますので、もし痛みを感じた場合はすぐにお知らせください。また、事前にそのことがわかっている場合は、治療前にご相談いただけると助かります。治療後の数日間は、通常は痛くない刺激でも過敏に感じることがありますが、ほとんどの場合、数日以内に治まります。痛み止めも処方いたしますので、痛みが強い場合は服用してください。
A.植物に例えると、神経のある歯は生きた枝であり、神経を失った歯は枯れた枝のようなものです。神経がない歯は、より折れやすく(割れやすく)なるため、固いものを噛むことはお避けください。また、歯ぎしりや食いしばりによる歯への過剰な負担を軽減するために、就寝時や集中して作業する際は、オーダーメイドのマウスピースを着用することをおすすめします。さらに、適切な歯磨きが継続されていないと、歯周病などの疾患を引き起こし、安定した口腔環境を保つのが難しくなります。日常的なケアだけでは取りきれない汚れも存在するため、定期的な検診と専門家によるクリーニングを受けることが大切です。
A.セカンドオピニオンだけでもカウンセリングは可能です。現在の根の状況、解決するための治療方法や治療のリスクなどをお伝えします。
A.かかりつけ医の先生からの紹介状があれば、当院で精密根管治療だけを行うことも可能です。










